何も予想しなければ、相場は上に行くか下に行くか、確率は1/2である。
確かに、それはそうかもしれません。
そんなことを考えたことは、ありませんか?
しかし、この考えが相場に何の影響があるでしょうか。
・・・。
・・・・・・・。
なんの影響もありませんね。
いや。
あるとすれば、海外FXの世界にあるキャッシュバックという稼ぎ方についてでしょうか。
海外FXでいうところのキャッシュバックというのは、国内証券会社のそれとは違い、取引すればするほど返ってくるお金が増えていきます。
つまり、1ロット分の取引をすれば○○円返ってきますよ、ということ。0.1ロットで取引すればキャッシュバックも10分の1をもらえますし、100ロットの取引をすれば100倍もらえることになります。もちろん、勝っても負けても同じだけ支払われるのでありがたい。
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さて、ここで本当に勝率50%だとしたら、同じpips数で勝ち負けを繰り返している限りトレードからの損益はプラスマイナスゼロに落ち着くはずですね。そして、キャッシュバック報酬だけが貯金として貯まっていくという、なんとも美味しい話になります。
なんだか面白そうなので、これを検証してみましょう。
過去チャートからの検証
EAによるバックテスト/設定
「無作為で勝率50%になるのか?」このテーマを検証するために、ローソク足が一本確定する度にその方向へエントリーするという、至ってシンプルなEAを用意してみました。
陽線が出ればロングにエントリーをし、陰線が出ればショートにエントリーします。一度に保有するポジションは1つまでとし、ポジションが解消されれば次のローソク足でまたエントリーを判断します。
できるだけ相場環境にもトレンドにも左右されない、無作為な単純エントリーを目指した自動売買です。
検証は、MT4に標準搭載のストラテジーテスターを利用しましょう。EAの勝率などパフォーマンスの検証を、過去チャートで自動でやってくれる便利機能です。
スプレッドが大きいとそもそも確率1/2の前提が崩れてしまうので、スプレッド設定は最小の0.1pipとします。
この0.1pipのスプレッドの影響を極力避けて、利確は20pips、損切りも20pipsに設定。もっと値幅をとってもいいのですが、キャッシュバック目的であればトレード回数を多くしたいので、これぐらいで適切でしょう。
検証機器: MT4 ストラテジーテスター
通貨ペア: USDJPY
スプレッド設定:0.1pip
時間足:15分足
決済指値設定:20pips
決済逆指値設定:20pips
検証期間:2019年のある期間(期間の終わりを8月31日で統一)
検証結果
まず、約50回のエントリーをテストした結果がこちら。
正確に50回というトレード回数の指定はできないので、近いところで48回のサンプリングができました。
トレード数:48回
勝ち数:19回(勝率39.58%)
負け数:29回(負率60.42%)
コレだけ見ると、確率1/2にはとても遠いですね。
次に、エントリー100回。
トレード数:100回
勝ち数:40回(勝率40.00%)
負け数:60回(負率60.00%)
お、約50回の時よりは、ほんの少し勝率50%に近づきました。
次に、エントリー約200回。
トレード数:202回 勝ち数:101回(勝率50.00%) 負け数:101回(負率50.00%)
おおっと、いきなり勝率50%のピタリ賞になってしまいましたよ。
だめ押しで、次にエントリー500回もいってみましょう。
トレード数:497回
勝ち数:228回(勝率45.88%)
負け数:272回(負率54.12%)
これは意外な結果になりました。サンプルトレードの数をだいぶ増やしたにも関わらず、200回のときに達成した勝率50%からこんなに大きく離れてしまうとは。
500回のサンプルの中で50回近くも勝敗に差が出ては、小さい誤差とは言えないでしょう。
というわけで、今回はUSDJPYの15分足で、上記の通り検証してみました。通貨ペアを変えたり、時間足や利確/損切りまでの距離を変えれば、また違った結果は出るでしょう。
理想としては、トレードの数を重ねれば重ねるほど勝率50%に収束していくだろうということでした。
しかし、上記の検証結果がそんな理想を打ち砕いています。実際には500回もトレードを重ねていても、大きな振れ幅が出る可能性が十分にあることがわかりました。
これでは、上で期待していたような「トレード利益はプラスマイナスゼロを狙ってキャッシュバックだけもらってしまおう」という作戦は不可能です。いや、できないことはありませんが、いったいいつになったらプラスマイナスゼロのレベルに戻ってくれるのか全くわかりませんので、オススメしません。
で、勝率50% × キャッシュバックで儲かるのか?
ちなみに今回の検証では、ドローダウンが嵩んでも破産状態にならないよう、ロット数は0.01ロットに設定していました。USDJPYやEURUSDでの0.01ロット取引だと、キャッシュバック額は業者にもよりますが、まあ多くて8円ほど。これを500回取引したら、4000円のキャッシュバック。
500回のトレードに半年以上かけて、4000円。しかも、口座残高はプラスマイナスゼロになっているかどうかはわからない。
上に表示しているテスト結果から見ても、500回(テストでは497回)のトレードが終わった時の損益は、初期値から比べて—74.79ドル。約8000円の損が出たということですね。
キャッシュバックの稼ぎより、トレードからの損失の方が大きくなる可能性が十分にある。これではちょっと、投資できません。
運が良ければプラスで終わることもあるかもしれませんが、スプレッドやスワップのコストも掛かってくることを考えると、それこそ狙った期間でプラスで終われる確率は50%以下でしょう。
まとめ
・ トレード回数が多ければ多いほど勝率50%に収束する傾向はあるが、振れ幅も大きい。
・ スプレッドやスワップのコストも考慮すると、収益がプラスで終われる可能性は高くない。
・ 勝率50%を見込んでキャッシュバックで稼ぐことは、不可能ではないが成功の可能性は低い。
「FXで勝つも負けるも運次第さ〜」という幻想は、見事に打ち砕かれましたね。
最低でも勝率50%だろうと踏んで、少しだけでも勝率を上げるロジックを組み立てていこうと考えていた方、実際のスタート地点はそんなに甘いものではなかったということです。
少しでも勝率を上げるための考え方を、このサイトを通して一緒に勉強していきましょう。