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ワイコフ理論 実践編 〜 値動きのヒントとエントリーポイント

ワイコフ理論 実践編 〜 値動きのヒントとエントリーポイント

前稿ではワイコフ理論の概要をお伝えしました。

  関連記事:ワイコフ理論〜100年続く相場の真理でチャートを3次元で解く

しかしながら、これだけを読んで実際のチャートと見比べてみても、なかなか納得のいく相場は見つからないかもしれません。

本稿ではこれを踏まえ、ワイコフ理論を実践に投入するための知識を解説して参ります。

まだ前稿をご覧になっていない方は、必ずそちらから先に目を通しておいてくださいね。

相場を読み解く3つのヒント

前稿に引き続き、次の海外サイトを参照しております。

 参考リンク:The Wyckoff Method: A Tutorial (StockCharts)

同サイトで書かれている内容から、ワイコフ理論の実践のヒントを次のように書き出すことができます。

・ 出来高(ボリューム)

・ 強弱を比較する

・ 相場の集合的人格Composite Man

まず、これらについて見ていきましょう。

出来高(ボリューム)

出来高もしくはボリューム(Volume)という指標があります。

ここまでのワイコフ理論の解説で何度も出てきた、重要キーワードですね。

株式市場でいえば、出来高といえば期間内に取引された株数をいいます。

一方でのFXでは、出来高の意味合いは少し違って、期間内に価格が動いた(ティックした)回数になります。これはつまり、期間内に何回の取引があったかということと同義です。

ワイコフの理論では、この出来高が非常に重要視されています。

出来高が大きいということは、多勢の投資家が売買をした、ということになります。

例えば、ローソク足がそれまでより比較的長いものが発生し、同時に出来高も上昇していたら、これは同じ方向に多くの投資家が売買しているという可能性が高いですよね。

株式市場であれば、マーケットメーカーが大きな売買をした、ということであるかもしれません。

逆に、ローソク足が小さくなってきて、出来高も同じように小さくなれば、これは相場の活気がなくなっていることに他なりません。

さらにいえば、大きな実体のローソク足が突如として発生しているにもかかわらず、出来高が小さければどうでしょうか。巨額の売買はあったが、取引きした人数は少ないということ。ということは、多数の投資家の売買の積み重ねではなく、大口のマーケットメーカーが大きな取引をしたのではないかという可能性が見えてきますよね。

また、次の画像のような波とボリュームの関係もわかりやすい例です。

下降トレンドが始まったとき、波が下降に向かっている(推進波)ときはボリュームが増加しています。売りで追随している投資家が多いということでしょう。

そして逆行の調整波①〜②のときは、ボリュームは減少の傾向。つまり、トレンドに聡い投資家たちは買いに追随することはなかったということでしょう。

しかし、トレンドの終わる前にはこの傾向は崩れています。

調整波③に対して急激にボリュームが伴うようになりました。これが意味しているのは、おそらく売りポジションの清算。

さらにこれ以降は、トレンド方向であるはずの下降波のときにボリュームが右肩下がりに。一息で押し下げられる値幅も小さくなり、推進力が弱くなっていることが見受けられます。

買い勢力が強くなったのであれば、ここまで『供給』過多だった相場に『需要』が存在感を増してバランスがとれつつある(=レンジになる)ことが予測できるようになります。

このように、出来高/ボリュームに注目することで、チャート画面の向こう側で起きていることが想像しやすくなりますね。

ただ、先述の通り、株式とFXでは出来高の指標の算出方法が異なりますので、そのあたりのニュアンスにはご注意ください。

強弱を比較する

銘柄/通貨ペアの強弱

ワイコフが参入する銘柄を選ぶ際、その銘柄の「強さ」を他の銘柄と比較して決めていたといいます。

例えば、次の画像の2銘柄。

APPLE(AAPL) vs ナスダック指数($COMPX)

まず、両者に高い相関性があることはひと目でわかります。これをポイントごとに見比べていけばどうでしょうか。

#1から#3の部分は、AAPL では高値切り下げ、対して$COMPX では高値を切り上げています。この時点では、 AAPL の方が比較的弱かったようですね。

その後、#3から#5では AAPLが高値切り上げており、反対に$COMPX が切り下げています。#4から#6の安値の位置関係も同じです。どうやら、AAPL が比較的強い相場になりました。

ここらでそろそろ、AAPL の買いを考えるころでしょうか。

よく見ると、AAPL が最安値をつける直前の大きめの陰線で、出来高が不自然に跳ね上がっているのがわかります。

ここで「スプリング」が発生したのだと気がつけば、その後の適度な押し目で買いを入れてもよさそうではないでしょうか。

海外のトレーダーは、このようにお目当ての銘柄と関連する株価指数(S&P500など)を見比べることを重要視しています。

FXの場合も、ハーフスイング手法 などでおなじみのあきちゃん先生は、USDJPYと日経平均は相関関係があるから見比べている、といつか仰っていました。

通貨の強弱/通貨インデックス

また、FXでは通貨ペアではなく通貨それぞれの強弱を比較する術もあります。

例えば次の3つの通貨ペアを並べてみたとします。

EURUSD (下降トレンド)
USDJPY (上昇トレンド)
EURJPY (下降トレンド)

これらのトレンドからして、それぞれの強弱はこのように考えられます。

EURUSD 下降トレンド → EUR 弱い / USD 強い
USDJPY 上昇トレンド → USD 強い / JPY 弱い
EURJPY 下降トレンド → EUR 弱い / JPY 強い

この状況から順位付けをすると、

USD > JPY > EUR

という順で通貨の強さが相対的に現れますね。

強い通貨と弱い通貨の組み合わせでトレードする通貨ペアを選ぶというのも、もちろん有りです。

これを、もっと視覚的にわかりやすくしてくれているのが mataf.net の 通貨インデックス(Currency Index)です。

 >> mataf.net Currency Index  

このページを開くと、チャートが2つあります。

上のチャートは、通貨の強さを示す通貨インデックス。一定の期間における他の主要通貨に対してのそれぞれの通貨の価値の変動(評価値)が示されます。

つまり、インデックスが上昇すれば、FX相場全体を見渡して、その通貨の評価が平均的に上がっているということですね。

デフォルトでは米ドル(USD)のインデックスになっていますが、EUR や JPY など他の通貨のインデックスや、通貨ペアのチャートへも変更できます。必要に応じて比較したいものを並べられるので、便利です。

下にあるラインチャートでは、複数の通貨インデックスを比較することができます。

デフォルトで出ている一本目の紺色の線は、EUR のインデックス。

左側に羅列してある通貨名から、比較したい通貨を選ぶと、チャート上に表れます。

USDを選んでみると、こんな感じに。

EURは2月半ばから強くなっている(上昇している)のに対し、

USDは2月下旬は停滞、3月に入ってまず弱くなり(下落)、3月10日ごろから撥ね返るように一気に強くなっていますね。

これは、EURが上にある間はEURが強い、というわけではありません。位置関係に大きな意味はないのです。

EURが上昇の傾斜にあるときは「為替相場全体的に見て、相対的に強い」、逆に右下がりの傾斜であれば「為替相場全体的に見て、相対的に弱い」ということになります。

では、この2月下旬から3月末までのEURUSDのチャートを見てみましょう。

2月の20日ごろから、EURUSDは上昇しています。mataf の通貨インデックスを見ると、EURはこの時期上昇していますが、USDは停滞しています。つまり、EUR の強さにEURUSD も引っ張られているということですね。

3月に入れば、EURUSD チャートはエリオット波動の上昇第3波を完成しています。一方の通貨インデックスは、EURは上昇継続、USDはちょうど下落しています。そりゃあ、EURUSDも大きな上昇を見せるのも納得です。

その後、3月の10日からEURUSD急落。このとき、EURのインデックスはヨコヨコに停滞していますが、USDが急速に上昇。3月10日は、コロナウイルスで世界経済が打撃を受ける中、米国が大規模経済政策を発表した日だったでしょうか。それとも、他の国々の経済が弱まって、一気に米国債に資金が流入したとか?

いずれにしろ、3月10日からのEURUSDの変化は何はともあれ米国経済に引っ張られた、ということが明らかになりました。

ワイコフの研究した証券取引相場にはFXでいう「通貨ペア」に該当するような概念はないかと思いますが、銘柄ごとの強弱を比較するのであれば、通貨そのものの強弱も参考にしてみてもよいのではないでしょうか。

相場の集合的人格Composite Man

「相場を動かしているのが一般的な売買や投資目的なのか、あるいは巨大な資本が手を加えているのか、そんな事実関係がどうかというのは些細なことだ」

というようなことをワイコフの著作には書かれていたといいます。(The Richard D. Wyckoff Method of Trading and Investing in Stocks, section 9M, p. 2)

相場を動かしているひとつの「人間」があると仮定するべし、とワイコフは提唱しています。その仮定の人物を「Composite Man」と呼びます。直訳すれば、さしずめ「集合的人間」「集合的人格」といったところでしょうか。

仮に、この集合的人格である彼をここでは『Mr.J(ミスター・ジェイ)』と呼びましょうか。

我々が仮定するべき Mr.J は、相場を陰で操るような役柄だと考えましょう。

賢い Mr.J は、相場から莫大な利益を得るために、長期的なプロジェクトを仕掛けてきます。

つまり、私たちは Mr.J のしようとしている仕事に無関心であれば 彼の利益のための相場の肥やしになるだけだし、逆にMr.J の仕掛けにコバンザメのごとく乗っかることができれば、私たちも大きな利益にあやかることができるというのです。

これが、ワイコフ理論の大底辺にある考え方でしょう。

これを、100年前に言っちゃっているから凄いですよね。

パソコンもインターネットもない20世紀初頭の投資家たちならいざ知らず、幸いにも現代の私たちはこの 『Mr.J』ならぬ『マーケットメーカー』というものの存在を知っています。

もちろん、相場を動かす一挙手一投足の全てがマーケットメーカーの仕業だとは限りませんが、ワイコフのいう『Composite Man』には奇妙なリアリティを感じるわけです。

おっと、誤解のないようにいっておきますが、『Composite Man』は『マーケットメーカー』と100%同義ではありません。あくまでも、「相場を陰で操る仮定の人間」です。そこに意思決定の大きな影響を与えているのが「マーケットメーカー」だというところが妥当な認識ではないでしょうか。

ということで、ワイコフはさらに、我々 個人投資家のやるべきことを次のよう述べます。

・ Composite Man は 慎重に相場の先行きを計画し、実行し、そしてそれを完成させる

・ ゆえに、Composite Man は大衆がさらに株を買い入れたいと思わせるように相場の中で仕向けてくる。・・・彼が、既に大量に株を買い入れて保有している相場の中で。

・ 投資家としては特定の銘柄に絞って相場を研究し、その相場の習性や、暗躍している マーケットメーカーの動向(やり方、クセ、売買のタイミング等と思われる)を理解するべきだ。

・ 相場のチャートの中に Composite Man の動向を見いだすことができるようになれば、利益の出る売買ポイントを早くから絞り込むことができるようになると信じている。

というわけで、前稿でお伝えしたワイコフの相場サイクル理論を実践に活かすためには、まず特定の相場(銘柄/通貨ペア)に絞って、その相場の中のマーケットメーカーの行動、ひいては相場全体に表れている値動きのクセを研究していくことが近道になりそうです。

チャートをあれこれ眺めてみて「ん?どのへんにワイコフ理論が??」と疑問を残したまま放棄してしまっては、もったいないですよ。特定の通貨ペアを選んで集中的に研究してみましょう。

実際のチャートから例題

ここまでワイコフ理論について解説してきましたが、正直、実際のチャートを見てもワイコフの相場サイクルを見つけ出すには多少の訓練が必要だと思います。

例題として3つほど、チャートを用意しました。

下の画像の範囲のチャートで、ワイコフ理論を考察してみてください。

解答例のひとつとして、参考の書き込みを入れたものを用意しています・・・が、ここではなくスクロールダウンして「まとめ」のさらに下に置いておきます。一考の後、ご参照ください。

(※ 解答例は「まとめ」の下に!)

エントリーポイントの考察

さて、ここまで長々とワイコフの教えを解説してきました。

これらの説明の目的は『相場サイクル』のフェーズA〜E をチャートの中に認識するための知識だといえます。

それぞれのフェーズが認識できれば、有利なところでエントリーすることができるようになります。

もしもレンジ抜けからの押し戻りを狙うというのであれば、せっかく頭をひねらせて フェーズ Cやフェーズ D まで読み解いた意味がありません。

ワイコフ理論を実践すれば、次のような早めのエントリーポイントを検討することができます。

フェーズ C エントリー:スプリングからのレンジ戻り

レンジ帯が長く続いたとき、ローソク足の値幅縮小とボリュームの減少から、フェーズ B が大詰めになっていることを知ることができます。

そんなとき、ローソク足がひょっとレンジを少しだけ抜け出してまたレンジに戻ってきたりしたら、「スプリング来た!」とあなたは興奮してしまうかもしれません。日足チャートであれば、この瞬間をいったい何ヶ月待ったことでしょう。

エントリー条件:フェーズBがだいぶ進行してレンジの上限下限が明確に規定されていること。リスクリワードが1: 3以上期待できること。

エントリートリガー: スプリングと思しき値動きが発生してレンジに価格が十分もどったとき。

損切り目標: スプリングで飛び出した価格の少し外
第一利確目標: レンジの反対側
第二利確目標: レンジの値幅と同じだけ価格が伸びたところ

レンジを飛び出したあとに大きな値幅が期待できるかどうか。それはワイコフの相場ルールのひとつである、「起因とその効果(Cause and Effect)」の考え方にあります。それまでのレンジでどれだけ揉み合ったか、マーケットメーカーたちがポジションを溜め込んでいるかどうかによるでしょう。

その見通しによって、第一利確目標で全決済するなり、半分だけ決済するなり検討すればよろしいかと。

このエントリーポイントであれば、かなり効率の良い損小利大が確保できますので、3〜4回失敗して1回成功するぐらいでも利益が残るのではないでしょうか。

あなたなりのエントリールールを明確化して、勝率と損益比率を割り出してみてはいかがでしょうか。

フェーズ D エントリー:スプリングを確認してからの第3波

スプリング「らしき動き」だけじゃあエントリーの根拠にできないよ〜、という方もおられることでしょう。

それでは、フェーズ D でのエントリーではいかがでしょうか。みんな大好き「第3波」です。

スプリングで弾みをつけた相場が、勢いのあるローソク足とボリュームの増加を見せれば、投資家の追随を得ていると仮定することができるでしょう。

スプリングからの大きな反発を第1波と考えて、そこからの押し目戻り目を拾ってエントリーすることもできます。

損切りは上記のフェーズCでのエントリーの場合と変わらないと思いますので、リスクは高くなります。

その代わり、うまくすれば勝率は向上できるでしょう。下の時間足にトレンドラインを引いてライン抜けからエントリーするとか、チャートパターンを築いたときだけトレードするとか、ですね。

エントリー条件: スプリングが発生したことが明確となり、新たなトレンドに向けてボリュームも増加を見せていること。

エントリートリガー: スプリングのあと、最初の調整波に下位足でトレンドラインをひいて、そのブレイクから

損切り目標: スプリングで飛び出した価格の少し外
第一利確目標: レンジの反対側
第二利確目標: 第1波の値幅と同じだけ第3波が伸びたとしたところ

もっとも、上記の2つのエントリー手法では、スプリング(と思われる値動き)が発生することが前提となっています。

・・・が、フェーズ C で必ずスプリングが発生するとは限りません。

スプリングがないまま次のトレンド方向へ相場が進んでしまう場合はフェーズ C とフェーズ D はリアルタイムで認識しづらいことでしょう。

その時は、上記のエントリー手法はすっぱり諦めましょう。

勝率の期待できないトレードをしないことは、勝率の向上になり利益を保留することでもあります。諦めるべきは諦めるということも、勝ちトレーダーの条件ですよ。


以上。正直、どこまでがいわゆる『ワイコフ理論』の範疇になるのかわかりませんが、ワイコフの教えは現代のトレーダーにとっても非常に大きな意味があると考えます。

ウェブ上では日本語でワイコフ理論を教えてくれるサイトは多くありませんが、和訳された書籍はいくつもあるようです。ご興味のある方は、試してみてはいかがでしょうか。

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まとめ

・ 相場に君臨する影の支配者『Composite Man』の動向を予測することで利益を出しやすくなる。それぞれの相場で習性が異なるので、特定の通貨ペアに絞って研究すること。

・ 相場参加者の動向を知るために、ボリューム(出来高)インジケーターが有効である。

・ 通貨ペアの強弱、または通貨自体の強弱からトレードに有利な通貨ペアを探ることも有益。

・ ワイコフの教えを駆使してフェーズ C、フェーズ Dの到来を判断することで、有利なエントリーができる。

実際のチャートから例題〜解答例〜

参照元サイト:Price Action Analysis Using the Wyckoff Trading Method (FOREX TRAINING GROUP)
参照元サイト: GIROLAMO ALOE
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