「ダイバージェンス」といえば日本語では「逆行現象」と訳されているようですが、これは意訳であり半分 誤訳です。
ダイバージェンス(divergence)の本来の意味は「相違」「変化」「分離」であり、「逆行」というニュアンスはありません。
チャートとインジケーターの間にダイバージェンス(相違)が起きているということは
「なんか、雰囲気が変わったぞ」
という程度の現象にすぎず、反転を約束するものではないのです。
そして、どこのサイトを見てもダイバージェンスの解説は表面的なものしかありません。
曰く、
「ダイバージェンスが起きたらトレンド転換の予兆と思え」
以上。
これは、あまりにも残念。
私にとっては、ダイバージェンスはプライスアクションであり、先行指標であり、相場の雰囲気を知る手がかりです。
本記事では、ダイバージェンスという現象を紐解き、そして効果の高いダイバージェンスの活用方法を考えてみたいと思います。
ダイバージェンスって、なに?
ダイバージェンスというものを知る前に、本稿で活躍するオシレーター系インジケーターについて。
オシレーター系インジケーターは、指定期間分のローソク足のデータから計算して、現在の値動きの傾向(上昇傾向、下降傾向)などを数値化してグラフにしたものです。
例えば有名な RSI
RSI の特徴
期間内の値上がり幅と値下がり幅を比較することで価格変動の「大きさ」や「速さ」を数値化
陽線の合計が陰線の合計より大きければ50%以上、陽線オンリーであれば100%、陰線オンリーであれば0%
MACD はもっと単純で、わかりやすいです。
MACD の特徴
2本の移動平均線の乖離幅から相場の「勢い」を数値化
乖離が大きいほど値が大きくなる
ゴールデンクロスならゼロより上、デッドクロスならゼロより下、移動平均線がクロスする瞬間が真ん中のゼロ
通常は、メインチャートで価格が上昇すれば RSI や MACD などのオシレーターも上昇し、チャートが下降すればオシレーターも下がります。つまり、値動きと連動したように動くのがオシレーターの特徴です。
そして、まれに現れる、チャートの値動きとオシレーターの動向が噛み合わなくなること。この現象をダイバージェンスと呼んでいます。
例えば、次の画像のようなところですね。黄色の線でダイバージェンスの発生を示しました。
メインチャートで高値が切り上がっているところで、RSI は高値を切り下げる現象が起きています。
このダイバージェンスはどのような理屈で発生し、どのような意味があるのでしょうか。
結論だけいえば「相場の勢いが衰えた」ということに収束するわけですが、オシレーターの種類によってその結論を導くための過程が変わってきます。
次にMACD を見てみましょう。
こちらも同じチャートでダイバージェンス が起きていますが、先ほどのRSI と完全に一致しているわけではありません。発生原理が違うので、当然ですね。
いかがでしょうか。
ダイバージェンスの発生で 「相場の勢いが衰えた」ことは分かったとしても、その意味するところが、・・・
「陽線と陰線の強さに差がなくなってきた」(RSI) ・・・と、
「移動平均線の幅が狭くなってきた」(MACD) ・・・では、
プライスアクションが別物であることが分かっていただけたかと思います。
ダイバージェンスを観測できるオシレーターは他にもありますが、あなたが選んで使うオシレーターの意味を理解することで、そのプライスアクションが示す情報まで読み取れるようになるでしょう。
「相場の後追い」と揶揄されがちなオシレーター系インジケーターも、これで価値があがるというものです。
3種類のダイバージェンス
実は、ダイバージェンスには3つの種類があります。
上記の説明で使ったのは、日本人トレーダーにもよく普及している、「レギュラー・ダイバージェンス」です。
その次に知られているのは、「ヒドゥン・ダイバージェンス」。
そしてほぼ全く知られていない「エグザジュレーテッド・ダイバージェンス」というものがあります。
この「エグザジュレーテッド」に関しては、「レギュラー」の一部だという認識で日本のダイバージェンス界隈からは省略されているのかもしれません。・・が、これはこれできちんと認識しておかないと、(これもダイバージェンスしているということでいいのだろうか)と迷ってしまうこともあるかもしれませんので、ここでは第三のダイバージェンスとしてご紹介させていただきます。
レギュラー・ダイバージェンス
レギュラー・ダイバージェンス(Regular Divergence)
上昇トレンドなら上の頂点を結ぶ
下降トレンドなら下の谷底を結ぶ
レギュラー・ダイバージェンスの発生は相場の勢いが弱くなったことを示唆する
日本のウェブサイトやYoutube などで解説されているものは、主にこのパターンとなります。
トレンドラインと反対で、上昇トレンドなら上側、下降トレンドなら下側に線を結びますので混乱しないようにしてください。
上で出したものと同じ画像ですが、後続との比較のため再度掲載します。
ヒドゥン・ダイバージェンス
ヒドゥン・ダイバージェンス(Hidden Divergence)
上昇トレンドなら下の谷底を結ぶ
下降トレンドなら上の頂点を結ぶ
ヒドゥン・ダイバージェンスの発生はトレンドの継続を示唆する
ヒドゥン(Hidden) は「隠れた・隠された」という意味なので、ヒドゥン・ダイバージェンスは「裏ダイバージェンス」とでもいえばよいでしょうか。
レギュラー・ダイバージェンスと大きく違うのは、トレンドラインと同じように山や谷に線を引くことになります。
先ほどのリアルチャートへ当てはめてみると、こうなります。
ヒドゥン・ダイバージェンスはトレンドの継続を示唆、と解釈されていますがその理由は何でしょうか。
現象として見れば、いずれも次のようになります。
オシレーターの計算値でも十分に下落の勢いを見せた
しかしメインチャートは安値更新まではしなかった
再度上昇が確認されたところでヒドゥン・ダイバージェンスと認識
つまり、大きめの押し目をつけて再上昇したということですね。
ここがエリオット波動の第3波と認識されれば、さらに上昇する可能性は高くなります。
もっとも、上記の現象を説明しただけではメインチャートのローソク足のプライスアクションを追うだけで分かることと変わりありません。
オシレーターの方に注目してみて分かることは、例えば押し目で十分なパワーを蓄えたかどうかということです。
上のチャート画像で、 RSI のヒドゥン・ダイバージェンスのAとBを比べてみてください。
Aの押し目では RSI は50か60ぐらいまでしか下がりませんでしたので、ここからの反発上昇があっても大きなものは期待できません。
一方でその次の B の押し目であれば、こちらは RSI の30を下回るまで落ちてきました。ここで反発したら、大きな上昇を期待してもいいですよね。
エグザジュレーテッド・ダイバージェンス
エグザジュレーテッド・ダイバージェンス(Exaggerated Divergence)
ダブルトップ・ダブルボトム のように横並びの頂点の時に発生
トレンドの転換を示唆する
エグザジュレーテッド(exaggerated)をそのまま日本語にすると「誇張された」「大げさな」という意味になります。
エグザジュレーテッド・ダイバージェンスをあえて日本語にすれば、「誇張されるべきダイバージェンス」となるのではないでしょうか。そうでなければ「大げさなダイバージェンス」になってしまいます。(私は前者だと思っています)
日本では知られていないエグザジュレーテッド・ダイバージェンス、きちんと説明してくれているのは「異国の戦士」さんぐらいしかおられないようです。
異国の戦士さんのご説明では、チャート上でダブルトップ、ダブルボトムを形成した時に現れるのが「エグザジュレーテッド・ダイバージェンス」だとのことですが、
私としてはフラットに頭打ちを繰り返しているような相場で起きているダイバージェンスも、エグザジュレーテッド・ダイバージェンスの範疇だと考えています。
海外のトレーダーの説明でも、「ダブルトップで~」という場合と「フラットなときに~」という場合の、2つのパターンが見受けられます。
・・ので、あなたの認識もお好みの方でよいでしょう。
異国の戦士さんのようにダブルトップ、ダブルボトムにのみ絞るということは、条件を狭めて再現性を高め研究しやすくなるという利点があるので、悪いことではありません。
次の画像は上のチャートと同じ場面で、エグザジュレーテッド・ダイバージェンスが発生している箇所を示しました。
ちょっとサンプルが少ないので、もう一つ例を出しておきますね。
レギュラー・ダイバージェンスの亜種のようなものなので、あえてこれを覚える必要もないのかもしれませんが、こうゆうパターンもありなんだと認識しておくことで、ダイバージェンスの活用範囲も広がっていくものと推察します。
ダイバージェンスの注意点
というわけで、ダイバージェンスの概要について解説してきました。
しかしながら、他のサイトで見比べていてもあまりその注意点に関して教えてくれるところがないようですので、ここでいくつかご提示させていただきます。
必ず反転するわけではない
ダイバージェンスが出ると相場が反転するといいますが、これまでにお伝えした通り、必ず反転するわけではありません。
ダイバージェンスの意味するところは「相場の雰囲気が変わった」ということだけです。
レギュラー・ダイバージェンスが発生したらといっても、トレンドの勢いが弱くなってきたというぐらいのことで、反転するとは限りません。
次のチャートのように、反転しないままダイバージェンス が頻発した場合、その全てで逆張りエントリーしていたら全て損切りになってしまいそうです。
でも、このダイバージェンス が効いていないわけではなく、上昇の勢いが死んでレンジに突入しました。
その後にしっかり下落に転じていますが、、、このダイバージェンスで分かるプライスアクション(=トレンドの勢いがなくなる)はレンジ突入で賞味期限切れですので、その後の下落まではここで示しているダイバージェンスは関係ありません。
(実は、もう一つダイバージェンスが隠れています。それは、レンジ後の下落に繋がるダイバージェンスですのでこのチャートから見つけてみてください)
そのまま継続する相場付きもある
別記事でご紹介している『秒速スキャル』のロジックもダイバージェンスを利用しているわけですが、そちらでの教えに「3回失敗したらそれ以上エントリーしない」というルールがあります。
正直、私はこのルールを知ってはいても、ついついエントリーを繰り返してしまうことがありました。「ここで反転したらデカイぞ」という絶好のエントリーポイントだったので、しつこく食らいついてしまったわけです。
こんな間違い、もうやりません。
実はこの「3回続けて失敗した相場は諦める」というルールは、メンタル管理のためでも、資金管理のためでもないということがわかったからです。
次の画像をご覧ください。
ダイバージェンスが何度も確認されながら、お構いなしに相場は上昇を続けています。
これはつまり、そういう状態の相場付きなのです。
この状態になった相場でダイバージェンスからの反転を狙っても、勝てるわけがありません。
しかし、リアルタイムでチャートを見ていてもそのような判断ができるわけではありませんから、「3回失敗したらやめる」というルールで規制しておくことが肝要だったのです。
あなたも同じ間違いを犯されないよう、そうゆう相場のときもあるものだと、割り切ってトレードしていただけるとよいのではないでしょうか。
「ヒゲ」は入れる派?入れない派?
ヒゲについては、ダイバージェンスの場合は答えは出ています。派閥や好みの問題ではありません。
本稿で取り上げている RSI や MACD のダイバージェンスであれば、ヒゲは入れません。実体ベースで考えます。
なぜかというと、RSI も MACD も「終値」を使って計算しているからです。
RSI は「終値」から次の「終値」までの値上げ幅・値下げ幅から計算。
MACD は「終値」を結んだEMA から計算。
ヒゲ先までを計算に入れると、「高値」「安値」の2つを計算式に組み込むことになります。そうゆうインジケーターも、確かにあります。
これはオシレーターの種類によって異なることですので、ご利用のオシレーターではどうなっているか、ご確認の上でご判断ください。
距離感に注意。間延びしたダイバージェンスは効く?効かない?
ダイバージェンスはトレンドの進行圧力が変化したことを察知するのに優れているわけですが、それはつまり、異なるトレンドに属する頂点でダイバージェンスが発生しても、それは無関係なものになります。
また、同じトレンドの中であっても、かなり距離(時間)の開いた頂点を結ぶダイバージェンスでも要注意です。
例えば次のチャート。
ダイバージェンスは確かに発生していますが、このようなユルユルとしたトレンドで、しかも1週間ほど時間をかけて作ったダイバージェンス。意味があるでしょうか?
はい、感の良い方は気づきましたでしょうか。上の時間足での様子が気になりますね。
先ほどのチャートは1時間足チャートでした。
これを、4時間足チャートで見てみるとこうなります。
エグザジュレーテッド・ダイバージェンスに近いレギュラー・ダイバージェンスを形成していました。
4時間足でのダイバージェンスとしては規模が大きくないので、続く反転下落も小規模で止まることになってしまったものの、機能するダイバージェンスであったことは確認できました。
このように、間延びしたダイバージェンスや、別のトレンドに属するダイバージェンスであっても、上位足のレベルでは意味のあるダイバージェンスを形成している可能性がありますので、確認してみるようにしましょう。
ダイバージェンスの使い方
ダイバージェンスで必ず相場が反転するものではない、とは繰り返し申し上げてきたことですが、これはダイバージェンスはエントリーサインにはならない、ということです。
エントリーの優位性にはなりますし、また他のインジケーターより早く反転を示唆してくれるので先行指標にもなります。
ここでいくつか、活用のヒントを紹介しておきます。
複数のダイバージェンスを組み合わせる
異なるオシレーターでは、ダイバージェンスの出るタイミングも異なります。
本稿で見てきた RSI と MACD を同じチャートで見比べても、一方はダイバージェンスが発生しているのに一方は発生していない、ということはよくありました。
ダイバージェンスはエントリーの優位性を高めるといいますが、では複数のオシレーターが同時にダイバージェンスを見せていれば、その分だけ優位性も倍加されるのでしょうか。
はい。私はそう思います。
異なる原理で相場の勢いを計算しているオシレーターがそれぞれ反転を示唆しているのですから、期待値は上がります。
本稿で見てきたチャートでも、 RSI と MACD の両方が同時にダイバージェンスが発生した後は、大きな反転につながっているケースがほとんどでした。よろしければ、見返してみてください。
わざとそのようなチャートを見つけてきて使用したわけではありません。
たまたまの偶然か、そうでなければ、つまり、そうゆうことなのでしょう。
相場の転換点で根拠の一つに加える
トレンドの反転を期待している時に、トレンドの反転を示唆するプライスアクションが確認されたら、嬉しくありませんか?
つまりは、ダイバージェンスの使い方はここに集約されると思います。
例えば次のような、下降のトレンドラインが引かれている時。
チャートの少し右側、まだ見ぬ ① のポイントで、もうすぐローソク足がトレンドラインにタッチします。
この時にダイバージェンスが起きたら、トレンド方向順張りのショートを準備できますね。ダイバージェンスで即エントリーではありませんよ。ダイバージェンスはエントリーサインではないので。
ちなみに、チャネルラインにタッチの ② のポイントでは、1時間足チャートでもしっかりダイバージェンス が確認できます。
そして肝心のチャネルライン上、青っぽく四角の色付けをしている箇所を5分足に落としてみると・・・
1度目のラインタッチではダイバージェンスなしで下落継続。
2度目のタッチではダイバージェンスも発生して、間もなく上昇に向かいました。
1時間足チャートのダイバージェンスの最中に、5分足チャートでもダイバージェンスを確認できた好例となりました。
トレンド転換を期待している箇所でダイバージェンスを観測するとは、こうゆうことですね。
あなたのロジックのエントリーポイントにも、こうして優位性を加えることができます。
当サイトでご紹介している次のロジックとも、相性が良さそうです。
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また、もしも、ダイバージェンスを加えても勝率7割~8割が達成できないという場合は、FX-Katsu 先生の 『秒速スキャル』を検討してみてもよいと思います。
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特にこの『秒速スキャル』はRSI と MACD のインジケーターを使用するロジックになりますので、上記のように2つのダイバージェンスが同時発生することでさらに精度を高めることができると期待できます。
ボリュームとの相性について
最後に、ちょっとおまけです。
ダイバージェンスはトレンドの転換を事前に示唆してくれる先行指標の役割があるということはご理解いただけたかと思いますが、同じように相場の雰囲気を教えてくれるインジケーターとして「ボリューム」もいい仕事をしてくれます。
ボリューム =出来高
FX相場では世界中の取引高を計測することは不可能なので「ティックの回数」をボリュームとする。(ティックとはローソク足がピコピコ動くこと)
つまり一本のローソク足の期間の間にどれだけ(回数)取引が行われたかということを示し、相場参加者の意欲を読み取ることができる。
【画像引用元:ワイコフ理論 実践編 ~ 値動きのヒントとエントリーポイント】
このように、相場参加者のヤル気を推し量ることができる「ボリューム」。
これを、RSI のような価格ベースの計算値に掛け合わせたインジケーターがあります。つまり、ボリュームの高い足がより重要度を増す RSI のようなイメージのボリューム系オシレーターです。
そのインジケーターの名は
マネーフローインデックス(Money Flow Index = MFI)
【引用元:Wikipedia テクニカル指標一覧】
同じチャートで MFI と RSI を比べてみても、線形がはっきりしていてしかもダイバージェンスの感度が高いことがわかります。
私のように相場の雰囲気も気になるというトレーダーさんにとっては、MFI も研究のしがいがあるインジケーターですのでご紹介させていただきました。
まとめ
・ ダイバージェンスはトレンドの雰囲気が変わった時に発生する。
・ ダイバージェンスには3種類ある。一般的に利用されているのはレギュラー・ダイバージェンスのみ
・ フラットな相場で発生するダイバージェンス もある(エグザジュレーテッド・ダイバージェンス)
・ 複数のオシレーターのダイバージェンスが重なると、反転への優位性が上がる
・ ダイバージェンスを繰り返してもいつ反転するか分からないので、自分のエントリーロジックを信じる。反転しなければ、諦める
・ ダイバージェンスを観測できるオシレーターはいくつもあるが、「ボリューム」の要素を加味することができる MFI がオススメ