水平線が相場を区画整理して、上下の節目をつける役割があるのだとすれば、トレンドラインには相場の美しさを抽象化する機能があります。
相場は波を打ちながら進むものですが、その波がある特定の幅に収まるように流れているとしたら?
だらだらと勢いに任せて水が流れるのでなく、川のように限定されたルートを通ることがわかれば、だいぶ扱いやすくなるのではないでしょうか。
そんなトレンドラインも、やはり人によって『正しい引き方』が違うようです。
本稿ではその中でもヒゲの大外を繋ぐオーソドックス(でいいのかな?)な線を基本に、その応用を解説していきますが、大事なことは他の引き方のトレンドラインでも共通しているはずです。
それは、
同じ角度で意識されていること
レジサポ転換のあったラインであること
この2つです。
あなたの信じる正しいトレンドラインの引き方が本稿で紹介するラインと違っていたとしても、上記2つのポイントで、信頼性のあるトレンドラインになっているかどうかを判定してください。
どの引き方のトレンドラインが正しい、ということではありません。あなたの使う手法に見合った引き方を採用するべきだと思います。
トレンドラインの大原則は高値安値の更新
点が2つあったら線が引ける。トレンドラインも無数に引けるんでしょ。
・・・と、いうご意見の方。本当にそうでしょうか。
早速ですが、次の問題を見てみて下さい。
次の3枚の図のうち、赤の線がトレンドラインとして正しいものはどれでしょうか。
Aは、この線形だけを見る限り、安値は切り上げていますが高値は切り上げていませんね。これでは、ダウ理論上ではトレンドが発生しているとはいえないので、この赤いラインもトレンドラインとはいえません。ただの、「そのうちトレンドラインになるかもしれないライン」です。
Bの線は、価格が高値も安値も切り上げて、上昇トレンドが成立しています。この赤い線は、立派なトレンドラインです。
Cについては、「トレンドラインになるかもしれなかったライン」を価格が下抜けて、直近の安値を下に割っています。それから高値更新に動いているので、この低い方の安値を結んでこそトレンドラインになります。
おわかりでしょうか。「トレンド」ラインというからには、トレンド成立の根拠となる高値どうし/安値どうしを結んでこそのトレンドラインになります。
ヒゲを結んだ線とするか実体を採用するべきかというような議論はあってもいいとして、トレンドの高値安値を意識していない線は、トレンドラインではなく「当たりの良い」線という分類だと私は思います。
「当たりの良い線」は、それはそれで有効なラインもありますが、これは初心者が自信を持って引くにはハードルが高いラインでもあります。
一方でヒゲ先から大外の線を選んで引いていくトレンドラインであれば、ダウ理論のトレンド定義さえ押さえておけば誰にでも引くことができます。そして、世界中の投資家が見ているダウ理論のトレンドだからこそ、多くの投資家に意識されているトレンドラインになります。
では、確認として次のDも見てみましょう。
Dでは、高値と安値を更新したトレンドにトレンドラインを引き、そのあとに価格が直近安値を下抜けました。このトレンドラインは、まだ有効です。この後、新しい安値③を起点に高値②を上抜けたりすると、その時点でトレンドラインの引き直しになります。その場合の新しいラインは・・・、①と③を結ぶ線ですね。
同じ角度の斜め線がよく効く不思議
相場では、まるで決まり事でもあるかのように、同じ角度の斜め線が意識される傾向にあります。
これはある意味不思議なことで、相場を物理学のように解析することができるのであれば、この現象はいったいどのように論証されるのか、ちょっと興味があります。
しかし、不思議とはいえ、これも大きな事実。
同じ角度で意識されるからこそ、次のような活用が見いだされています。
チャネルライン
チャネルとは水路や、通路といった意味のことです。
トレンドラインと、同じ角度の平行線の中を水路のように、価格がその中にとどまるラインがあります。
図で見た方が分かりやすいですね。こんな感じです。
黄色がトレンドライン。白い線がトレンドラインの平行線をトレンドの外側に引いた線、つまりチャネルラインです。
さらに、この平行線のチャネルの間にも、同じように意識されていると思われる平行線をいくつも引くことができます。
それでは、このトレンドラインを価格が突き抜けて、新たな高値安値をつけたらどうすればいいでしょうか。例えば、上のチャートの右端の矢印のあたり。
答えはカンタン。というか当然、新しいトレンドラインを引き直します。同時に、ラインの角度も変わるので、チャネルラインも新しくします。
ここでは私はトレンドラインを大きなトレンドにしか引いていませんが、それはこのレベルのトレンドを相手に勝負しようとしているからです。
もしもあなたがもっと小さなトレンドでもトレードチャンスを探りたいというのであれば、時間足を下げたりして、小さなトレンドにもそれぞれラインを引いてみればいいでしょう。
逆にいうと、自分の狙っているトレンドよりも小さいレベルのトレンドには、ラインを引く必要性はありません。小さな時間軸のトレンドラインとのクロスを重視するような手法でもやってない限りは、線が多くなればなるほど邪魔になるだけです。
線を引いて視覚化してしまうと、それは他でもないあなたの意識を迷わせるラインになってしまいますから、無用な雑念が増えることと同じです。
チャネルラインには候補がある
では反対に、トレンドラインでなくチャネルラインの方を価格が突破したらどうなるでしょうか。
その時は、新たな頂点にチャネルラインを引きますが、実は、チャネルラインには候補となるものが存在します。
それは、実は、『相場の過去、現在、未来に引く水平線』でご紹介した、「直前のトレンドの波から引く水平線」と同じ要領になります。
直前のトレンドの顕著な高値安値の頂点に、現在のトレンドラインと同じ角度の斜め線をあてていきます。
ひとつのチャネルラインを抜けたとき、これで次の目的地が分かりました。次のチャネル候補まですんなり届くかどうかはわかりませんが、届いた時にはここで意識されて値動きが反転するか、停滞するかもしれないという予想がつきます。
作戦が、立てやすくなりましたね。
知る人ぞ知る、裏チャネルラインでトレンドラインの評価を決める
トレンドラインと同じ角度の斜め線に効果がある、という前提のもとでここまでご説明しました。
ちょっとここで逆に考えてみると、
「同じ角度の斜め線が意識されていることが確認できれば、トレンドラインの信頼性が上がる」
ということにもなりませんか。
というわけで、裏チャネルを引いてみましょう。
トレンドラインとは反対側の、本来はチャネルラインを引く側、その山どうし(下降トレンドなら谷どうし)にラインを繋げて、トレンドライン側に平行移動してみます。
どうでしょうか。本来のトレンドラインと同じ角度で動いていますか?
この裏チャネルの角度がトレンドラインの角度に近ければ、これはより美しいチャネルを形成していることになります。そして同時に、トレンドラインでもチャネルラインでも、何度も価格の反転が起きているということにもなります。
事例として、次のチャートを見てみましょう。
トレンドライン(黄線)とチャネルライン(白線)を引いてみても、どうもすっきり角度が合いません。
よく見ると波形の高値の山が一線に並んでいるようなので、裏チャネル(赤線)を当ててみました。
これで、チャートを右に進めてみると、、、
なんと、後から引けるようになったトレンドラインが裏チャネルに合致しました。
どうやら、この相場の正しいチャネルは、この赤線のチャネルだったようです。
あえて突っ込んでいうと、裏チャネルが未来のトレンドラインを予見していたともいえます。
このように、トレンドが長く継続して成熟してきた時に、このような裏チャネルとの一致がよく見られる気がします。
よろしければ皆様もチャネルでのトレードを目指すのであれば、裏チャネルの角度も意識して見てみるようにしてみてください。
トレンドが出る前にわかるトレンドライン候補線
同じ角度の線が意識されるという現象を活用して、実は次のような芸当もできる時があります。
次の画像のトレンド、順調な下落を続けた後に、少し大きな戻りが入りました。ここから、一時的な上昇トレンドが発生するとしたら、どのようにトレンドラインが引けるでしょうか。
お察しの良い方は分かりましたでしょうか。
直前の一時的な上昇と、同じような角度のトレンドラインが期待できるのです。
不思議ですね〜。
でも、意外と使えるネタなので、覚えておいて損はありませんよ。
レジサポ転換て食えるの?大好物です!
信頼性のあるトレンドラインは
・ 同じ角度で何度も意識されている線であること
・ レジサポ転換を経験している線であること
・・・と、先述しました。
レジサポ転換とは、価格の下落を下支えしていたサポートラインが、ある点を境に、上昇を阻むレジスタンスとして機能するように役が転換するという現象です。もちろん、レジスタンスからサポートへ転換するという逆のパターンもあります。
一般的に、何度も意識されているようなレジスタンスやサポートラインを価格が突き抜けるためには、勢いをもった大きな値動きが必要になります。
それはつまり、多くの投資家の心がひとつになって「この線を越えよう」という意識の表れでもあります。
そんな線がサポート/レジスタンスの役割を反転させて相場が動いたら、その反転は投資家の総意であると伝えているようなものです。
以上がサポレジ転換というものであり、チャート上でも割と見つけやすいものですが、実はこれ、ちょっとしたコツをつかむことで、トレーダーとしてのレベルをひとつ上げることができます。
まずは、誰にでも分かるレジサポ転換の様子をチャートでご覧ください。
Aの点より左側ではこのラインはレジスタンスとして機能していたのに、Aで勢い良く上に抜けた後には、サポートとして価格を下から支えるように働いているのがよくわかると思います。
このラインを右に延長してみれば、後々にもこの線がよく意識されていることが見て取れます。
レジサポ転換を経験した斜め線は、その後も意識されやすいということです。
では次に、斜め線ではありませんが、この水平線を見てみましょう。見てほしいポイントはもちろん、サポレジ転換です。
誰が見ても明確なダブルボトムから、ネックラインへ戻りが入って型通りの上昇を見せている図です。まさに、教科書的なチャートパターンですね。
ネックラインの水平線が、見事にサポレジ転換を果たしています。
コレをふまえて、次は斜め線です。
このダブルボトムについては、ネックラインはどうなっているでしょうか。
中央の山に水平線でネックラインを引くと、意識されているようないないような、ちょっとはっきりしない動きになっていますね。
実は、ここでは斜め線がネックラインの機能を果たします。
ダブルボトムの左肩から中央の山を通して斜め線を引くと、右側でサポレジ転換を見せているところが出てきます。これが、上の例の水平線ネックラインへの戻りに相当します。
この図では線を引いたのはダブルボトムの左肩と中央の山ですが、この線に右肩も反応を見せるようなチャートになれば、より期待が持てますね。
ついでにこちらのチャートはどうでしょうか。
急落から突如として現れた逆三尊ですが、これをどうしたいか、もうわかりますね。
逆三尊の肩どうしのネックラインに線を引いてみると・・・
ネックラインへの戻りが入っていることで、サポレジ転換が起こった事も明確であり、その後のチャートの続きを見てみれば、コレこの通り、、
どうでしょう。サポレジ転換を経験したトレンドラインや斜め線が、その後もよく意識される線になるということが、お分かりいただけたでしょうか。
チャートパターンを読み解くときに、この斜め線のネックラインを知っているのと知らないのとでは大きな違いがあります。
是非、活用してみてください。
と、いうわけで。このようなラインでトレンドラインやチャネルラインを形成してくれれば、より投資家に意識される美しい相場の流れが見えてくるのではないでしょうか。
まとめ
・ 信頼できるトレンドラインの条件は
同じ角度で意識されていること
レジサポ転換のあったラインであること
・ ダウ理論に則ったトレンドラインであれば高値安値の山谷をラインでつなぎ、高値安値が更新されればトレンドラインも更新される
・ チャネルラインは裏チャネルと角度が相似しているほど、信頼性が増す
・ レジサポ転換は、トレーダーの総意で相場の向かう方向が変わったことを示唆する
・ チャートパターンのネックラインを、斜め線が形成することもある